医学生に一言

紆余曲折あって医学部に在籍しているが、どうやらいろいろと勘違いしている学生や教員がいるので一言言っておきたいと思う。

 

多くの友人は自分たちは辛い勉強を頑張ってきたのだと自負する。先日、授業の雑談の中である教員の口から「君たちはずっと勉強してきて今ここにいて、さらに一生勉強をする必要があるので給料が高い。医者は稼げるぞ~(笑)」といった内容の発言が出た。私はそれを聞いて甚だ呆れた。先生がこんな調子だから日本は3流国家に成り下がったのだと思った。

 

たしかに医者になる連中には幼少期から何かを犠牲にし、受験戦争に勝ち続けてきたものが多い。同級生が放課後に遊んでいる時間に学習塾に通い、恋愛にうつつを抜かしているころには血反吐を吐くような思いで積分をしてきた。自分たちは同級生が怠けている間に頑張ってきたのだから、当然将来はお金をたくさんもらえて人からも尊敬されるのだといった理屈だ。だが、遅ればせながら医学部に入った身からすれば、その理屈は抱腹絶倒ものだ。医学生の立場にあるということは人並み以上の頭と勉強に集中させてもらえる環境、という本人の生まれてからの努力とは関係のない「偶然」に恵まれたうえで、ほんの少しの本人の努力があったとしか思えないからである。だから当然、社会に対しては「長い間勉強させてもらってありがとうございます。」という感謝の気持ちが芽生える。どう頭を捻っても「ママ、ボクは頑張ったんだよ!だからボクはエラいんだ。」とはならない。

 

感謝をして、さらに世の中に絶対貢献しろとは思わない。昨今の医師の長時間労働は問題だ。私もどう働いていくかは模索中だ。できれば、体を酷使しない方向で働きたいと思う。正直、医療に一生捧げようという気持ちもない。でも「偶然」によって医者にならせてもらったのだから恩返しはしたいと思う。