悪あがき

親世代(60~70代)には自分の親は非常に厳しかった、また自分の子育ても今の親世代みたいに温くなかったと言う人が多い。同じような話は至る所で聞く。逆に今の親が厳しすぎるという声は皆無だ。彼らの背後には一家の大黒柱としてどっしりと構え、無口であるが威厳をもって子供を圧倒した父親たちと礼儀作法や生活習慣に口うるさいが、大きな愛情をもって子供たちを包み込んだ母親たちの姿が亡霊のように見え隠れする。

たしかに今の親世代は子供を自由にさせ、放ったらかし過ぎだと感じる部分も私ですら感じるが、この手の主張がなんの正当性を持たないことは自明である。時代の流れとともに子育てに関する価値観はかわっていくものだ。もし仮に彼らの主張が正しく何世代にわたり繰り返されたとするならば世界はとっくに終了している。そもそも人間は年を取ると懐古的になるがゆえにそう感じるのは仕方のないことである。

問題はそのような発言を現在子育てに奮闘する親世代に投げかけることにある。自分たちジジババ世代がそのように「感じる」ことは自然なことであり、それをわざわざ言うのは野暮なことだと気が付けるはずなのに。私なら黙っている。沈黙は金だ。自分の衰えを認めたくないがゆえの悪あがき的な症状はだれも幸せにはしない。